科学とは。
ジョン・デューイ『民主主義と教育(下)』岩波書店、2013、59-60頁。
科学とは、経験の中の認識的要素の結実のことである。それは、個人的あるいは習慣的な経験によい印象を与えるものを述べるだけに満足しないで、ある信念の根源や根拠や帰結を明らかにするような叙述を目ざすのである。この目標を達成すると、それらの叙述に論理的性格が与えられる。教育的には、科学的方法の論理的特徴は、知的に高度化された教材に属するものであるから、学習者の方法ーつまり経験の知的性質がより粗雑な段階からより洗練された段階へと進む過程の時間的秩序ーとは異なっている、ということに注目しなければならない。このことが無視されると、科学はただそれだけの単なる情報とみなされ、しかも、その情報は、非日常的な専門用語で述べられているので、通常の情報よりも面白くなく、縁遠いものになる。科学が教育過程の中で果たさなければならない機能は、それが人類のために果たしてきた機能である。すなわち、経験を局部的、一時的な事件から解放すること、そして、個人の習慣や好みという偶然によって曇らされない知的展望を開くことである。抽象作用、一般化、明確な公式化という論理の特性は、すべてこの機能に関連しているのである。ある観念を、それが生じた特定の背景から解放し、それに一そう広い関連を与えることによって、どの個人の経験の成果も、すべての人間が自由に使えるものとなるのである。このようにして、究極的には、そして哲学的にじは、科学は、全般的な社会進歩の道具となるのである。