教育者・島木赤彦(6)
島木赤彦著『歌道小見・随見録-他一篇』岩波書店、1994年(第6刷)。
「単純化」『歌道小見』より(43頁)
歌われる事象は、歌う主観が全心的に集中されれば、されるほど単一化されてまいります。写生が事象の核心を捉えようとするのも、同じく単一化を目ざすことになるのでありまして、単一化は要するに全心の一点に集中する状態であります。この消息の分からぬ人々が、短歌に、複雑な事象や、もしくは哲理や思想など駢列して得意としております。そういう人々は、短歌を事件的に外面的に取扱っているのでありまして、短歌究極の願いが、一点の単純所に澄み入るにあることを知らないのであります。