「日記をつける注意(一)」斎藤喜博。
「日記をつける注意」
『斎藤喜博全集1』国土社、1969年(474-475頁)。
私は児童の日記を単に個人別に検閲し指導するだけでなく、常に全体的な指導も続けている。すなわち、全児童の日記をひととおり見た結果、心づいたことを引きぬいてまとめ、これをプリントして全児童に渡し、説明するのである。
このプリント「日記をつける注意」は連続していくので、だんだんと指導されてた、また指導した経過がわかっておもしろい。
つぎに五年女生に与えたプリントの最初のものを記してみる。
日記をつける注意(一)
◯真実の心の姿を書くこと。
ありのままの心、ありのままの感想を正直に書きなさい。
ほんとうの皆さんの心の姿のあらわれている日記が尊いのです。
毎日毎日同じことが書いてある日記は、読んでいて心を打たれる何ものもありません。心を打たれるもののないのは、ほんとうに皆さんの心が書いてないからです。
◯その日その日の反省すべき問題、また最も心に感じた問題を選び出して日記につけなさい。それが反省となり感想となるのです。
◯そしてくだらないことを長々しく書かないようにしなさい。
最も強く心に浮かんでいるもの、それだけをできるだけ細かく自分の心に聞いて書きなさい。
それが日記としてもまた綴り方としてもよいのです。
◯できるだけ漢字を使うように努力しなさい。努力して使っているうちに漢字はおぼえられるものです。
◯ただ「きょうは勉強がよくできてうれしい」「きょうはできるなくてなさけない」などと書く人はだめです。
こんな人こそほんとうになさけないと思います。よくできたらどうしてよくできたのか、できないのはどうしてか、それらについて細かい深い反省ができるはずです。またそのほかいろいろの細かい感じも心には起こっているはずです。それらを正直に書くのです。それがあなた方の真実の姿なのです。
◯先生のところへ出すのを楽しみにしている人がいいますが、たいへんよい心がけだと思います。先生もそういう人のをいっそう楽しみにして見ています。(七月十七日までの日記を見て)